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懸念されていたことが、現実になってしまった。
6回表、2点を追う大阪桐蔭の攻撃。5回まで2安打無失点だった花巻東のエース・大谷翔平が、先頭の3番・水本弦をカウント0-2と追い込みながら四球で歩かせてしまう。一瞬、嫌なムードが漂ったが、続く4番の田端良基には落ち着いてスライダーを打たせた。
打球は高々と上がるショートフライ――滞空時間が長く、平凡なフライと思われたが、ショート・大澤永貴の後ろにポトリと落ちた。浜風の強い甲子園ではよくある光景だが、じつはこれこそ花巻東がもっともダメージを受けた安打となってしまった。
昨夏の甲子園で花巻東は帝京に7対8と乱戦の末に敗れた。その敗因を佐々木洋監督はこう分析していた。
「(菊池)雄星(現・西武)の代(=センバツ準優勝、夏4強)の外野手は足が速く、守備範囲が広かった。あの代なら捕れていたフライが3本ぐらいあった。改めて、広くて風が強い甲子園は、外野守備が大事だなとすごく思いました」
花巻東は普段から外野手はかなり深く守る。長打力のある打者を迎えると、フェンス手前で守ることも珍しくない。長打を防ぐこと、後ろに走るより前に走る方が速いことなど、理由はいくつかある。その分、ポテンヒットになる確率は高くなるが、判断力と足でいくらかはカバーできるという考えだ。足がそれほど速くない高橋翔飛を昨夏のセンターからファーストにコンバートしたのはそのためだ。
「深く守るからこそ、前(の打球)を捕る練習をして、内野が後ろを捕る練習をしています。ただ、岩手のメイン球場である岩手県営球場は(両翼)91.5メートル、花巻球場が92メートル。この中でやっていて、いきなり大きさの違うところで野球をすると違和感がある」
レフトの田中大樹は試合前、こう話していた。
「風もあるので、とにかく上がったフライは全部捕る気持ちでいきます」
ところが、田端のフライを田中は突っ込みきれず、大澤は追い切れなかった。
「突っ込めばよかったです……。お見合いしてしまった。練習ができていませんでした」(田中)
「ショートのボールでした。(フライが)高かったので、人任せにしてしまったというか……。あれで流れを変えてしまった……」(大澤)
このポテンヒットでピンチを広げ、犠打とセカンドゴロで1点を返されると、さらに四球と8番・笠松悠哉の二塁打で逆転を許してしまった。笠松に打たれた球は高めに入ったスライダー。完全な失投だった。以前、大谷はこんなことを言っていた。
「ストレートは結構飛ばされるし、一発長打が嫌というのはあります。ただ、それ以上にポテンヒットは心が傷つくんです」
故障明け初の公式戦マウンドとなった大谷は、試合前のブルペンから逆球や抜け球が目立ち、試合でも5回までの85球のうちボール球は40球と明らかに力んでいた。センバツ前の練習試合でも、1試合で投げたのは最長6イニング。大阪桐蔭の西谷浩一監督が、「大谷くんはケガをしていたので後半にスタミナという面で不安がある。どこかでスキが出る。後半は必ずチャンスがくると選手には言いました」と言う通りの展開になった。
そして6回に逆転を許して気落ちした大谷は、7回にも田端に2ランを浴び、勝負を決められた。
「スライダーのキレは感じていませんでした。8番(笠松)が打ったので、自分が打たないわけにはいかないだろうと思った。後半、(大谷の)球威は落ちていましたね」(田端)
大谷は力んでいつも以上にスタミナを消耗していたうえに、心のダメージも負ってしまった。終わってみれば11四死球というまさかの投球内容だった。
「ケガしてからフォームが完全に戻っていませんでした。投げ終わった後に体が一塁側に傾く悪いクセが出た。最初から調子が悪かった。修正できませんでした」(大谷)
テイクバックから力が入り、インステップする悪循環。試合中に修正できるのが大谷の持ち味だったが、実戦経験の不足がその感覚も鈍らせてしまった。
一方、大阪桐蔭のエース・藤浪晋太郎も立ち上がりは力んでいた。初回、先頭打者への初球はワンバウンドの147キロのストレート。そして17球中13球がストレートで7球がボールだった。2回には大谷にスライダーを完璧に打たれ、逆風にもかかわらずライトスタンドへ運ばれるなど、4回まで5安打2四球と毎回走者を出す苦しい投球だった。だが、ここから立ち直り、5~7回の3イニングを三者凡退。特にリードを奪ってからは、「相手を見下ろして投げることができた」と語った藤浪。序盤はバントの構えをされるたびにマウンドから降りてきたが、後半は動かない場面も増えるなど、相手の揺さぶりにも動じなかった。
「ホームランを打たれたところから修正できた。攻めの気持ちで切り替えました」
昨夏の大阪府大会決勝では5点リードしながら7回途中4失点で降板するなど、藤浪には中盤以降のピッチングに不安があった。しかし、この試合は中盤以降に逆転し、リードを広げてくれたことで、最後まで自分のピッチングをすることができた。
藤浪と大谷という「高校ビッグ3」同士の投げ合いとなった注目の一戦は、ともに2ケタの三振を奪うなど持ち味を発揮したが、1本のヒットがガラリと試合を流れを変えた。6回に許したポテンヒットは、大谷、そして花巻東にとってホームラン以上に痛恨の一打だったに違いない。
田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
(この記事は野球(webスポルティーバ)から引用させて頂きました)
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6回表、2点を追う大阪桐蔭の攻撃。5回まで2安打無失点だった花巻東のエース・大谷翔平が、先頭の3番・水本弦をカウント0-2と追い込みながら四球で歩かせてしまう。一瞬、嫌なムードが漂ったが、続く4番の田端良基には落ち着いてスライダーを打たせた。
打球は高々と上がるショートフライ――滞空時間が長く、平凡なフライと思われたが、ショート・大澤永貴の後ろにポトリと落ちた。浜風の強い甲子園ではよくある光景だが、じつはこれこそ花巻東がもっともダメージを受けた安打となってしまった。
昨夏の甲子園で花巻東は帝京に7対8と乱戦の末に敗れた。その敗因を佐々木洋監督はこう分析していた。
「(菊池)雄星(現・西武)の代(=センバツ準優勝、夏4強)の外野手は足が速く、守備範囲が広かった。あの代なら捕れていたフライが3本ぐらいあった。改めて、広くて風が強い甲子園は、外野守備が大事だなとすごく思いました」
花巻東は普段から外野手はかなり深く守る。長打力のある打者を迎えると、フェンス手前で守ることも珍しくない。長打を防ぐこと、後ろに走るより前に走る方が速いことなど、理由はいくつかある。その分、ポテンヒットになる確率は高くなるが、判断力と足でいくらかはカバーできるという考えだ。足がそれほど速くない高橋翔飛を昨夏のセンターからファーストにコンバートしたのはそのためだ。
「深く守るからこそ、前(の打球)を捕る練習をして、内野が後ろを捕る練習をしています。ただ、岩手のメイン球場である岩手県営球場は(両翼)91.5メートル、花巻球場が92メートル。この中でやっていて、いきなり大きさの違うところで野球をすると違和感がある」
レフトの田中大樹は試合前、こう話していた。
「風もあるので、とにかく上がったフライは全部捕る気持ちでいきます」
ところが、田端のフライを田中は突っ込みきれず、大澤は追い切れなかった。
「突っ込めばよかったです……。お見合いしてしまった。練習ができていませんでした」(田中)
「ショートのボールでした。(フライが)高かったので、人任せにしてしまったというか……。あれで流れを変えてしまった……」(大澤)
このポテンヒットでピンチを広げ、犠打とセカンドゴロで1点を返されると、さらに四球と8番・笠松悠哉の二塁打で逆転を許してしまった。笠松に打たれた球は高めに入ったスライダー。完全な失投だった。以前、大谷はこんなことを言っていた。
「ストレートは結構飛ばされるし、一発長打が嫌というのはあります。ただ、それ以上にポテンヒットは心が傷つくんです」
故障明け初の公式戦マウンドとなった大谷は、試合前のブルペンから逆球や抜け球が目立ち、試合でも5回までの85球のうちボール球は40球と明らかに力んでいた。センバツ前の練習試合でも、1試合で投げたのは最長6イニング。大阪桐蔭の西谷浩一監督が、「大谷くんはケガをしていたので後半にスタミナという面で不安がある。どこかでスキが出る。後半は必ずチャンスがくると選手には言いました」と言う通りの展開になった。
そして6回に逆転を許して気落ちした大谷は、7回にも田端に2ランを浴び、勝負を決められた。
「スライダーのキレは感じていませんでした。8番(笠松)が打ったので、自分が打たないわけにはいかないだろうと思った。後半、(大谷の)球威は落ちていましたね」(田端)
大谷は力んでいつも以上にスタミナを消耗していたうえに、心のダメージも負ってしまった。終わってみれば11四死球というまさかの投球内容だった。
「ケガしてからフォームが完全に戻っていませんでした。投げ終わった後に体が一塁側に傾く悪いクセが出た。最初から調子が悪かった。修正できませんでした」(大谷)
テイクバックから力が入り、インステップする悪循環。試合中に修正できるのが大谷の持ち味だったが、実戦経験の不足がその感覚も鈍らせてしまった。
一方、大阪桐蔭のエース・藤浪晋太郎も立ち上がりは力んでいた。初回、先頭打者への初球はワンバウンドの147キロのストレート。そして17球中13球がストレートで7球がボールだった。2回には大谷にスライダーを完璧に打たれ、逆風にもかかわらずライトスタンドへ運ばれるなど、4回まで5安打2四球と毎回走者を出す苦しい投球だった。だが、ここから立ち直り、5~7回の3イニングを三者凡退。特にリードを奪ってからは、「相手を見下ろして投げることができた」と語った藤浪。序盤はバントの構えをされるたびにマウンドから降りてきたが、後半は動かない場面も増えるなど、相手の揺さぶりにも動じなかった。
「ホームランを打たれたところから修正できた。攻めの気持ちで切り替えました」
昨夏の大阪府大会決勝では5点リードしながら7回途中4失点で降板するなど、藤浪には中盤以降のピッチングに不安があった。しかし、この試合は中盤以降に逆転し、リードを広げてくれたことで、最後まで自分のピッチングをすることができた。
藤浪と大谷という「高校ビッグ3」同士の投げ合いとなった注目の一戦は、ともに2ケタの三振を奪うなど持ち味を発揮したが、1本のヒットがガラリと試合を流れを変えた。6回に許したポテンヒットは、大谷、そして花巻東にとってホームラン以上に痛恨の一打だったに違いない。
田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
(この記事は野球(webスポルティーバ)から引用させて頂きました)
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